イルカパワーの次はアシカパワーみたい。

大水槽の前は人がいなかった。


「アシカパワーだ。」

「また変な言葉作って…そんなこと言ってると、本当に夕飯のおかずは魚にする!」


お、怒られた……

だって、本当のことじゃない。

館内放送で『アシカショーが…』って言ったら、みんな行っちゃったんだから。

これがアシカパワーじゃなくてなんなのさっ!


まあ、アシカパワーのおかげで大水槽、独り占めなんだけど。





「…――やっぱり同じ方に泳いでいくんだね。」

「そうだね……」

「キラキラしてて、きれいだよね。」

「……」



魚って、こんなに綺麗だったっけ?

キラキラしてて、宝石が泳いでるみたい。

……食べると美味しいけど……

こんなに綺麗に泳いでるなら、食べちゃうの、ちょっと可哀想かな?


首が痛くなるほど上を見上げていたら


「――!」

「そのまま……」




颯太に後ろから抱き締められた。



頬に当たる颯太の髪。

背中から回される腕。

聞こえるのは、颯太の息づかいだけ。




今朝、ギュッと抱き締められたときよりもドキドキする。


「…――颯太…?」

「ん……?」

「どうしたの?」

「ん……」


背中から回された腕が緩んで、ゆっくりと颯太の顔が近づく。


「…そう……た……?」



そのままゆっくりと……


柔らかな唇が重なった……