ふと、昔″あの人″に読んでもらった童話を思い出す。


あの頃はまだ……あたしと″あの人″は仲が良かった。




『昔ある村に、羊飼いの少年がいました。

その少年はとてもイタズラ好きでした。

ある日、その少年は村の人達に向かって、大きな声で叫びました。

″狼が来たぞー!!″……と。

村の人達は大慌て。

ですがそれは、少年がついた嘘だったのです……。

その次の日も、また次の日も、少年は決まって″狼が来たぞー!!″と叫びました。

村の人達は大騒ぎするも、少年の嘘だということが分かると、少年を怒って、また家に戻りました。

ある日のことです。

また少年は羊を連れて村を歩いていました。

すると、向こうの茂みから、本当に狼がやって来たのです。

少年は慌てて、″狼が来たぞー!!″と叫びました。

ですが、村の人達は出て来ません。

また少年の嘘だろうと思っていたからです。

″助けて!!本当に狼が来たんだ!!″

少年は大声で叫びますが、誰も助けてくれませんでした……。』