吉野のどこが好きだったのだろう。


最初は目を引く中性的な容姿に惹かれた。

それから仕事に対して真摯に打ち込む姿に。


「俺、バイト辞めるんだ」

「えっ?」

不意に告げられた告白にあたしは言葉を失った。


偶然にも吉野とは同じ大学の同級生だった。

とは言っても、学部が違うと待合わせをしない限り、大学で顔を合わせることはほとんど無い。

吉野がバイトを辞めるということは、あたし達が会う機会が無くなるということだ。


「大学も休学する。いつ戻れるかわからない」

「どうして?」

吉野は微笑んだ。

柔らかく儚く……