気持ちが少しずつ傾き始めている事に気付いているのか、ジョエルは既に手にペンを持ち、あかねの様子を伺っていた。
些か彼の思い通りになっている気がしなくもないが、とりあえず誓約書に目を通そうと視線を用紙に移す。
賞状のように金の縁が印刷されていて、その中に異国の言葉がずらりと書かれいる。
勿論、内容は全く分からない。
「……何て書いてあるの?読めないんだけど」
「異能者が守らなければならない幾つかの誓約が書かれている。が、大した事ではない上に、教えてやるのも面倒だ。下の空欄に署名をするだけでいい」
「…………は?」
言い方が気に入らなかったのか、はたまた態度が気に入らなかったのか。
恐らく前者だろう。
あかねは嫌悪と怒りを露わにし、その矛先をジョエルに向ける。
「分からないと、サインのしようがないんだけど」
「言っただろう。大した事はないと。君はただ――」
「教えてくれなきゃ、絶対署名なんかしない」
「……………生意気な小娘が」
理屈などは雑音の如く煩わしい。
言葉を遮ってはっきり言えば、ジョエルは聞こえるか聞こえないかの小声で悪態をついた。
「一度しか言わん。せいぜい聞き逃さないように」
ジョエルは渋々ながらも誓約書に記されてる事柄を一通り読んで、あかねに聞かせた。
.

