桜空あかねの裏事情


蝋燭の灯りと廊下から入る夕陽を頼りに部屋を見渡せば、最初に本の多さに目が行った。
床から山積み置いてある本や、捨てられているように置かれてる本など様々あり、場所によっては足場が無い程であった。
本棚に視線を移せば、どの棚も隙間なく本が並んでいてどれも厚みがある。
不意に爪先に当たった本を手に取ると、それは二冊あり、どれも他の本に比べれば厚みはない。
一冊は何かの文学書のようだったが特に興味を抱かず、もう一冊の本を見る。


「良い子の育て方?」


文書や古書などが多数ある部屋では、ある意味拍子抜けしたような奇抜な題名であった。
今の自分は明らかに変な顔をしていると思う。
そもそもあんな変質者に子供なんているのか。
それとも今後の人生の参考なのか。
どっちにしろジョエルの所有物なら、あかねにとってはおぞましいものに変わりはなかった。


「見なかった事にしよう」


元あった場所に戻して、再び部屋を見回す。
アーネストはいると言っていたが、先ほどから人の気配などなく、意識を集中させてみても変わりなかった。


「ジョエル………………さん」


この部屋の主の名前を呼ぶものの、返事は返ってくるわけでもなくただ静寂に包まれる。
本人がいなくてはこれ以上この場にいても意味が無いと思い、あかねは食堂へ戻ろうと仕方なく振り返った。


.