「茨城。千葉の隣だけど、ここより田舎だぜ?ちなみに明後日から寮住み。あかねは?」

「東京。私も寮住みになる予定」

「東京なのにか?通えないワケじゃないだろ」

「うん。まぁそうなんだけど……はは」


次第に言いづらくなり、この場をやり過ごす言葉が浮かばなくなってきて、あかねは苦笑する。


「まぁワケありよ」

「ワケありか」

「うん」


肯定して頷けば、昶はそれ以上の追求して来なかった。
他人に気を遣うと言っていたのは、どうやら嘘ではないのだと密かに思った。
彼の後に続いて外に出て空を見上げれば、まだ青い。
とは言え若干日が傾いており、ある程度時間は経過しているのだと推測出来た。


「この後どうする?」

「帰るだけかな。久々に兄貴が帰ってくるんだ」

「え!お前、兄ちゃんいたの?」

「うん」



――ぶっきらぼうで心配性な兄が。



「なら帰らないとな」

「昶は?」

「俺は寄り道する!荷物の整理も終わってるしな」

「そっか」


短い会話だが、このまま別れるのは名残惜しいと思うあかね。
初対面だから踏み込めない部分もあるが、何だかんだ香住昶と言う人物に興味があるのは事実だった。


「遅くなった言い訳は、適当に考えるかな」

「ん?」

「ねぇ、この近くにスタダあるんだけど、行かない?」

「マジで!俺その店好き!家の近所にもあってさ!」

「お、同志じゃん。私もお気に入りなの」

「んじゃ早く行こうぜ!」


満面の笑顔で校門を出て走り出す昶の背を見ながら、あかねもその後に続いて軽い足取りで校門を出たのだった。


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