三階 扉前
密かに食堂を後にしたあかねは、来た道を戻るように三階に上がって一番近くにある扉の前に立った。
「ここかな……」
階段を上がって、左側にある一番近い扉であると言っていたから間違いないだろう。
三階は扉が三つしかない上に、一つは自室として宛がわれた部屋で、もう一つは小さくて質素な扉だ。
そして目の前の扉は、それぞれ左右にアシメトリーの歪な装飾が施されている。
これだけで断定出切るわけではないが、ジョエルと言う男は不気味な上に趣味が悪いとあかねは思った。
「失礼します……」
他人の部屋にズカズカと入るのは気が引けるのか、誰に言うわけでもない断りを小さく述べる。
そしてノックもせずにドアノブに手をかけてゆっくりと押し開けば、鍵は掛かってなく容易に扉は開いて、部屋へと足を踏み入れる。
あかねは思わず目を丸くし、廊下と部屋を交互に見る。
廊下は夕焼けの所為か橙色に染まった温かな空間だが、部屋は蝋燭が数本だけ火を灯しているだけの限られた明かりしかなく、扉を閉めれば足元は見えなくなるのではないかと思うぐらい、とても暗かった。
あまりに違い過ぎる明るさに戸惑うが、あかねは更に部屋の奥へと足を踏み入れた。
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