「そう言えばジョエルさんは?」
朔姫の言葉に、頭中にあの男の姿が過ぎる。
先を歩いていたのを見ていた為、てっきりこの場にいると思っていたが姿が見当たらない。
あかねは不思議に思い結祈を見れば、彼は不気味なほど満面の笑みだった。
「いつもの約束破りです」
「……そうですか」
結祈の違和感のある笑顔に、朔姫は落胆したように軽く肩を落としていた。
朔姫の様子は分からないが、結祈はもしかしたら怒っているのかも知れない。
そんな事を思いながら眺めていると、不意に肩を叩かれる。
視線を向ければアーネストがいて、菓子を一つ口に入れて話し始めた。
「気にする事ではないよ。彼は人を困らせるのが、趣味なんだ」
果たしてそれを趣味にしていいのだろうか。
口にはしないものの、顔に出ていたのか彼は苦笑した。
「変わり者だからね。仕方ないのさ」
苦笑しながら平然と言ってのけるが、アーネスト自身どことなく遠い目をしており、彼もまた被害者なのだと容易に想像出来た。
「あかね嬢は彼と話したいのかな?」
「個人的にはあまり……」
と言うより、むしろ話さなくていいなら話したくないというのが、あかねの本音であった。
相手は自分の事をよく知っている。
けれど自分は相手を事を全く知らない。
それなのにどこか既視感を抱く自分がいる。
今まで初対面の人に対し抱く事の無かった感情を、ジョエルという男には感じたのだ。
まるで自分の知らない自分がいるようで、酷く不気味に感じる。
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