桜空あかねの裏事情



「………」

「沈黙は肯定と受け取るよ」


その言葉に結祈は顔を背ける。
彼が今どのような表情を浮かべているかは分からない。


「自分も全てを知っているわけではありません。ただ彼女がジョエルにとって、何か意味のある存在であるというのは分かります」

「意味のある存在……ね」


結祈の言っている事は、ジョエルの態度を考慮してもしなくても事実だろう。
アーネストは自分が持つ情報も合わせて思考を巡らせるが、それでも核心にはまだ遠い。


「興味深いね。ジョエルは彼女に何を望んでいるんだか」

「それは分かり兼ねます。ただ自分は、その事で彼女が傷つかなければいいと思います」

「同感だね。いたいけな少女を傷付けるのは良くない。まぁ傷心の少女を慰めるのも悪くはないけれど」


邪を含んだ発言に、結祈は思わず顔を歪める。


「先程も言いましたが、気が違っても彼女には手を出さないで下さい」

「分かってるさ。そもそも先の反応を見る限り、彼女にそのような事はまだ早そうだ」


初対面の時に跪いた自身に照れることも慌てることもせず、むしろ引き気味だった少女だ。
大抵の女性は動揺しながらも顔を赤らめ、恥じたりする。
馴れているのか鈍感なだけなのか、はたまたそのどちらでもないのか。
それだけでもアーネスト自身、あかねの存在に強い興味があり、惹かれていた。


「それでも、人として興味があるのは確かだよ」

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