桜空あかねの裏事情



「山川さん?」

「え?あ……」


一瞬誰だか分からなかったものの、印象ある色素の薄い髪を一つに結い纏めた彼女は、確かに教室で見た少女だった。


「桜空さん」


朔姫はやや驚いた表情で呟いた。
大した自己紹介では無かったが、どうやら覚えていてくれたらしい。
その事が少し嬉しくて、あかねは笑顔で頷いた。


「うん。覚えててくれたんだ」

「自己紹介の時に……珍しい名字だったから印象的で」


それだけで会話は途切れてしまったが、クラスメートがいるということに少しだけ親近感を抱く。


「今日からこちらでお世話になります。桜空あかねです。よろしくお願いします」

そう言って軽く頭を下げると、座っていた男と女があかねを手招きする。
ゆっくりと歩み寄れば、男は隣にある椅子に座るように促され従って隣に座ると、同時に男が身を乗り出してきた。


「ボクは菊地陸人!童顔だけど、もう七年前に成人済み!」


唐突に名乗ってきた男――陸人にあかねは驚き、言葉を失う。


「ねーねー!桜空って名字みたいだけど、もしかしてヨシさんの娘さん?」


.