いつものように挑発することもからかうこともなく、珍しく真摯に答えてくれたジョエル。
だが疑問を投げたあかねは、その答えの意味を明確に理解することが出来なかった。
ただ確かなことは、リーデルとはやはり他者に対して多大な影響を与え、オルディネに身を置く者にとっては特別な存在であるということ。
――リーデルって重い。
――だからって今更逃げたりしないけど。
――でもやっぱり私は、かけ離れ過ぎてる。
「分からない」
「例えが悪かったか」
「違う。でも分からない。ジョエルがどうして……私をリーデル候補に選んだのか」
間を置きながらも、続けてもう一つの疑問も口にすれば、息を呑む音が微かに聞こえた。
反応はあったものの、ジョエルがどんな表情をしているのか見る勇気はなく、あかねは俯いたまま話し始めた。
「最初の頃……私ならいいって言ってたけど、どうしてそう思ったの?私は異能も使いこなせてないし、自覚も足りない。その上、今じゃ自分勝手な理由でリーデルを目指してる。みんなが理想とするリーデルには、あまりにも遠過ぎる」
次々と溢れる言葉。
零した想いを止められるはずもなく、あかねは更に言葉をぶつける。
「それでも逃げたりしないし、決めた事は最後までやるつもりでいる。だけど不安になる。私がリーデルを目指してて本当にいいのか」
別に認めてもらいたいわけでも、尊ばれたいわけでもない。
ただ彼らと過ごす日々を失いたくないだけで、その方法がオルディネのリーデルになるということだった。
そう割り切ることが出来れば、悩むことなどないはずなのにそれが出来ない。
「…やはりそうか」
不意に呟かれた言葉。あかねは顔を上げる。
そこには直接見ることが少ない紫の瞳を細めながら、困ったように笑みを浮かべているジョエルがいた。
「リーデルを目指すことに不安を覚えるのは、至極当然のことだ。リーデルがどれだけ名誉なことであったとしても、それは重圧でもあり、場合によっては君自身に多大な負荷が掛かるだろうからな」
「……」
.

