それだけ伝えると、あかねは再び月を眺めようと空を見上げる。
ふと足音が聞こえた。
再度振り向くと、ジョエルがゆっくりとした足取りで歩み寄り、そしてあかねの隣に佇んだ。
珍しくサングラスを外しており、吸い込まれるように彼の見つめた。
「どうした?」
「え、あ……もしかして、ジョエルも風に当たりにきたの?」
「いいや。あの馬鹿騒ぎに付き合う気がないだけだ。いつもの事だが、酒が入ると騒がしくて適わん」
「そうなんだ…」
確かにジョエルがあの騒ぎのような宴に、身を置く姿は想像し難い。
本人の言うとおり、逃げてきたのだろう。
それきり言葉は途切れ、二人は夜の静けさに包まれる。
だがそこに気まずさも重苦しさもなく、どこか安らぎにも似た何かを感じながら、あかねは佇んでいた。
「――そういえば、少し時間をくれと言っていたな」
しばらくの沈黙。
それを破ったのはジョエルであった。
「あ……うん。少しだけ、ジョエルと話したいと思って」
まさかジョエルから振られるとは思ってなく、あかねは少し動揺しつつもそう答えた。
「あのさ……ジョエルはリーデルの事、どう思ってるの?」
「どう、とは?」
「前にね、陸人さんから聞いたの。リーデルは自分達に希望を見せて導いてくれて、自分の全てを捧げられる尊い人がなるものだって。だからジョエルにとってのリーデルが、どんな存在なのか気になって……」
そこであかねは口を閉ざす。
自分で言ったはずなのに、どうしようもない不安に包まれる。
一方でジョエルは沈黙したまま、口元に手を当てて考えていた。
「私にとって……リーデルは光だ」
僅かな沈黙の後に放たれた言葉は、意外にも抽象的な喩えだった。
「全てを温かく優しく照らしながら、時に目を射られるような眩しい輝きを放つ。それは魅入られる程に儚く強く……果てまで伴にありたいと思う。それが私の思うリーデルだ」
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