桜空あかねの裏事情


恐らく誰もが、朔姫の行動はジョエルの気分を害したと思っただろう。
しかし当の本人は気分を損ねるどころか、驚きを含んだ眼差しを向けるだけでどことなく上機嫌であった。


「まぁいい。昶を出す理由はただあるが、極端に言えば可能性だ」

「可能性…」

「私が覚えている限りでは、この場にいる過半数がお嬢さんに異を唱えていたと記憶している」

「はぁ…だから何なわけ?」

「周囲が否定的な中で、お嬢さんはそれでも挫けることなくオルディネの為に尽くしてきた。昶や駿、紅晶はそんな彼女がこれまで必死に探し集めた可能性だ。それを直に見れば、お前達が下す結論の良き判断材料の一つとなるだろう」


どうやら当て付けでもなければ、気紛れに選んだわけでもないらしい。
ジョエルの言葉に、少し安堵する昶。


「加えて言うなら、参加させるのは駿でも構わない。しかし私はまだ、昶の異能を直に見たことがないのでな。この機会に拝見するのも悪くない」

「えっ」


しかし後に続いた発言に、実はそれが本音なのでは。
と思わず言いたくなる衝動を必死に抑える。


「クックック……理由などは所詮、御託を並べただけのものだがな。して氷のお姫様は、これで満足して頂けたかな?」



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「うわー……それで昶はチーム戦に参加したんだ」

「そうなんだよ。そりゃ駿センパイに特訓してもらってたけどさ、オレ達がやってたのは大体異能の強化と制御じゃん。まさか戦うとは思ってなかった」

「だよね…」


昶は決して異能を使いこなせないわけではないが、朔姫のように実戦で扱えるまでには至ってはいない。
誰が見ても明らかなのに、それでも昶を選んだジョエルは、明確な目的があったとしても少々酷である。


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