「何スかそれ!俺そのものが鬱陶しいって酷いッスよ!」
何もそこまで言ってないだろう。
声には出さず内で訴える信乃は、ただ成り行きを見守る。
一方の葉風は、詰め寄る瀬々に対し鬱陶しそうに眉を顰めて、それ以上口を開くことはなかった。
様子から察するに、慣れているわけではないらしい。
「ははっ。瀬々は相変わらずだね」
「そうだね……あ、終わったんだね」
会話を振られ何気なく答えたが、気がつくとあかねが隣に座っていた。
どうやら電話は終わったらしい。
心なしか彼女の様子はどこか嬉しそうだった。
「あかねっちー。遅いじゃないスか。寂しかったッス!」
「あ、そうなの?なんかごめん。ってか待っててくれたんだね。先食べてて言えば良かった」
「勝手に待ってただけだよ。それより何か嬉しそうだね」
どこがとは言えないが、敢えて言うなら全体的な雰囲気だろうか。
気になって問い掛けると、あかねは嬉しそうに笑った。
「しろちゃんと会う約束したんだ。こっちに来てから電話とメールでしか話せなかったから嬉しくて」
「そうなんだ。良かったね」
満面の笑みを浮かべるあかね。
心底喜んでいるのだろう。
それが伝わったように、信乃も笑った。
しろちゃんが一体どのような人物かは知らないが、思う以上に親しい間柄なのかも知れない。
「ってか、しろちゃんって誰なんスか。俺の知ってる人?」
「知らないと思う。ご近所さんなんだけど、とても優して頼れる人だよ。小さい頃はよく遊んでもらったりしたかな」
幼い頃から付き合いがあったが、年が経つにつれ会う機会が少なくなっていた知人。
更にはあかね自身が直前になって急遽進路を変え実家を離れることとなったのもあり、疎遠になりつつあった。
だからと言って関係が切れることはなく、時間がある時に互いに連絡を取り合っている。
「まぁ嬉しいことはそれだけじゃないんだけどね」
「他にもあるの?」
「うん」
信乃の問いにあかねは頷いて、携帯を開く。
画面には大切なダチから届いた一通のメール。
一文だけの短い内容だが、あかねにはしっかりと伝わった。
「私も最後まで頑張らなくちゃね」
――みんなの為にも、
――自分の為にも。
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