桜空あかねの裏事情



「うーん……やっぱりそうなるよね」


話題を変えつつも核心を突くことを忘れないアーネスト。
一方の泰牙はぎこちなさはあるものの、誤魔化す様子はなくただ苦笑していた。


「君ならばあかね嬢を助けた後、別れを告げて去ることも出来たはずだからね。でもそうしなかったのは、あの時点で君自身に迷いが生じていたから」


人は独りで生きていけるほど強くはない。
自ら孤独を選び拒絶したとしても、再び関わりを持ってしまえば、そのぬくもりに焦がれるのは自然なことである。


「そんな迷いを抱えたまま、君はあかね嬢の傍にいる選択をした。しかしそれは建前で、実際はオルディネが自らの命を預けるに相応しい居場所であるか、そして自分は一体どうしたいのか再度確かめたかった……違うかな?」


聞かなくてもおおよその見当はついている。
だが本人から確証を得たい。
まるで自分の想いを語っているかのように述べるアーネストに対し、泰牙は困ったように笑みを浮かべて、降参と言わんばかりに軽く手を上げ溜め息を吐いた。


「本当に何でもお見通しなんだね。もしかして君の能力って、人の心も分かったりするの?」

「まさか。そこまで万能ではないさ」


読心の異能ならともかく、アーネストの異能はあくまで探索及び解析である。
対象の人物の特徴や性質などは解読出来るが、その人物の心情を推測することは可能でも解読することなど当然出来ない。


「恐らく君の中で、既にもう答えは出ているはず。でもそれを口にするまでの勇気が足りない」

「そうだね。俺にはまだ決断を出来る自信がない」


この数日の間で、泰牙は自分なりに結論は導き出す事が出来た。
だが同時に本当にそれでいいのかと、不安を拭い去れないでいるのだ。


「だからもう少しだけ待って欲しいんだ。今のままじゃ、どっちにしても後悔が残りそうだから」

「…そうかい。なら私は、君が後悔しない選択をする事を願うとするよ」


気遣うように言葉を掛けると、アーネストはそれ以降口を閉ざし、再び本に視線を戻した。

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