「っ……――」
嫌でも聞き覚えのあるその声に、あかねは僅かに肩を上げて反応する。
結祈にもそれが伝わったのか、心配そうにあかねを見つめる。
その気遣う視線を感じながらも敢えて後ろを振り向けば、数日前にも見た黒ずくめの男の姿があった。
「やぁジョエル。今日は随分早かったね」
「早く片がついたからな。自室で休もうと思って帰ってみれば結祈の声がして、出向いてみれば原因はお嬢さんだったか」
ジョエルと呼ばれた男はアーネストと話しながら、サングラス越しにしっかりとあかねを捉える。
明らかに警戒を含んだ表情の彼女に、愉悦を感じるかのように口元に笑みを浮かべる。
「久しぶりだな、お嬢さん。元気だったか?」
「………」
声を掛けられるものの、あかねは嫌悪感を隠す事なく黙り込む。
だがそんな事はまるで気にしていないかのようにジョエルは近寄る。
「相変わらず強情だな。それで?お嬢さんは何を騒いでいたのかな?」
「……………」
「黙りか。まぁ大体の予想はつく。差し詰め、会いたくなかったのだろう。忌避したい程に君の事を知っている私に……ね」
本心を当てられ思わず表情を歪める。
それを見逃すはずもなく、ジョエルは鼻で笑った。
そんな男の態度に不愉快さに気を害すものの、話したくないからといつまでも沈黙したままではいられない。
あかねは一旦心を落ち着かせて、重い口を開く。
「……やっぱりここは、旧寮なんかじゃなかったのね」
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