桜空あかねの裏事情



――オレも綺麗だと思うけど
――なんつーか、ちょっと怖い。
――人形かってぐらい整い過ぎてて
――まぁ朔姫もそうだけど。
――あ……ってことは
――美人は大抵怖いのか。


「昶さん…?」

「っは、はい!どうしたんですか?」

「いえ……先程から何やら難しいお顔をしてらっしゃるので、何か気掛かりな事でもと」


慌てて返事をすれば、紅晶は不思議そうに首を傾げつつも、特に気にする様子もなくそう答えた。
話に耳を傾けてはいたが、会話には入らず終始無言を貫いていた所為か、どうやら気を遣わせてしまったらしい。
そう思うと途端に申し訳なくなって、昶は苦笑した。


「大丈夫っすよ。難しい話だなって思ってただけなんで。」


それは強ち嘘ではなかった。
目の前で繰り広げられている会話は、少なくとも昶からしてみれば興味はなく、はっきり言ってしまえばどうでもいい事でもあった。
故に思考を巡らせることもなく、耳に入る言葉を右から左へと受け流すように単調としていた。


「そうでしたのね。余計な事をしてしまいました」


悪びれる紅晶に昶は慌てて首を振った。


「そんな事ないっすよ。紅晶さんは気に掛けてくれたわけだし……にしても、チーム戦ってどんな事するんですかね」


気を紛らすように半ば話題を変える。
何気なく口にしてみたが、現状からして最も気掛かりなことであり、心なしか疑問と不安が込み上げてくる。
そんな中、ふと扉が開く音が聞こえた。
どうやらこの部屋に通されたと同時に、協会の者に連れられ席を外していたジョエルが戻って来たようだ。
その証拠に一瞬にして会話が途切れ、突き付けられるように沈黙が訪れる。


「チーム戦の内容が決まった。どうやら協会側は、オルディネの現状とやらを把握したいらしい」

「ということは、やはり……」

「ああ。相手はさぞ油断していることだろう。容赦なく捻じ伏せてやれ」


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