桜空あかねの裏事情



それからも他愛のない言葉を交わしながら通学路を歩いた。
そして学校に着いて、教室への道のりもまた信乃と話しながら進んでいく。
教室へ足を踏み入れれば、ほんの数人しか姿がなく、クラスメート達のほとんどはまだ登校していなかった。


「おはよッス!」


そんな中、聞き覚えのある声が聞こえた。
待っていたと言わんばかりに輝かしい笑顔。
嫌というほど見覚えのあるその顔に、あかねは気が重くなった。


「………おはよ」

「おはよう。瀬々くん」

「二人とも元気ないッスねー。何かあったんスか?」

「別に。ただ朝っぱらから瀬々の顔を見たら、気分が悪くなって」

「うん。空きっ腹に生クリーム食べた感じだよね」

「え、何スかそれ!というか何気に酷くないッスか!?」

「普通でしょ」

「普通だね」


笑っていると信乃はクラスメートに呼ばれ、一旦この場から離れた。


「…やっぱ昶っちと朔姫っちは休みなんスね」


そこを見計らって、瀬々は呟いた。


「そうだよ。分かってるでしょ」

「一応……でも俺としては、てっきりあかねっちも休むかと思ったんスけど」

「そうだったの?」

「だって気になりやせん?ただの草試合ならまだしも、結果によっちゃあチーム解散も有り得るんスよ」


瀬々の言うことは尤もだ。
現時点で最下位であるオルディネが負ければ、リーデル有無以前に解散も十分にある。


「確かに気にならないわけじゃないよ。でも私が色々考えても仕方ないでしょ」
「そうッスけど」

「だから私はいつも通りの生活をしながら、みんなを信じて待つよ」


チーム戦に関して少なくとも今の自分は、遠くで見つめてることしか出来ない。
だがそのことに不思議と歯痒さを感じることはなかった。
恐らくあかね自身、本来自分がやるべきことを明確にを理解していたからだろう。


「というか、むしろ勝たなきゃダメ。私がしてきた事が水の泡になるし。もしここで負けちゃうようなら、オルディネは解散すべき」

「はっきり言いやすね」

「事実よ。それに…」

「それに?」

「今は中間の方が気掛かりだったりする」


目前に迫っているものを口にすれば、瀬々は途端に表情を無くす。


「ああ……嫌な現実ッスね」

そう呟きながら、どこか悟ったように遠くを見つめていた。

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