桜空あかねの裏事情



戸松 某所




黎明館を出てからしばらくして戸松駅を通過し、規定の通学路を一人歩くあかね。
普段ここを通る時よりも、同じ制服が目に付く。



「桜空さん!」


名前を呼ばれ振り返ると、クラスメートが手を振りながらこちらに向かって走って来ていた。


「おはよう。信乃」

「おはよう。今日は遅刻じゃないんだね。驚いたよ」


信乃と呼ばれた少年は笑顔でそう答えた。
男子の中では小柄で華奢な彼は、あかね達のクラスメートである。
当時は席も遠く、接点も皆無に等しかったがある時、数学の課題を綺麗に忘れていたあかねと昶が、打開策として咄嗟に声を掛けたのが信乃であり、それをきっかけに話すようになった。
見た目によらず、物事をはっきり言う性格にあかねは好感を抱き、最近では昼食も一緒に食べるほどである。


「そろそろ真面目に生活しようと思って」

「本当に?三日も保たないでしょ」

「酷い。保ったらどうするよ?」

「スタダで好きなの奢るよ」

「言ったね?男に二言は無いよ」

「当然。だから保たなかったら、桜空さんが奢ってね」

「いいよ」


軽く言葉を交わしながら歩いていく二人。


「そういえば香住くんと山川さんは?一緒じゃないの?」

「うん。二人は今日休み」

「え、何かあったの?風邪?」

「ううん、用事があるんだって」


隠さなければいけないわけではないが、一般人である友人にチーム戦と言えるはずもなく、自分も知らないふりをして用事の一言で片付ける。


「それより昨日の聞いたよ。かなりキツかったらしいじゃん」

「そんな事ないよ。でも二人とも予想通り基礎が出来てなくて、山川さん呆れてたかな。でもちゃんと最後まで教えてたよ。スパルタだったけど。僕は軽く教えたぐらい」


話題を変えれば、信乃は昨日の出来事を思い出すように笑いながら話し、あかねも相づちを打ちながら軽く笑った。


「とか言って、信乃って結構ドSだからなぁ。怪しい」

「……対策ノートいらないの?」

「冗談だよ」


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