桜空あかねの裏事情



アロガンテの今後と今回の元凶である男の末路を聞いて、あかねは悲哀や憐れを感じないどころか、どこか清々したような気持ちであった。
だが同時に後ろ髪を引かれるような感覚も覚え、暫し沈黙した後に口を開いた。


「一つ気になることがあるんだけど…」

「矢一か?」

「え……うん。知ってるの?」

「紅晶も口にしていたからな。様子を見た限り、今回赴いた理由は彼の安否だろう」


薄々は予想していたからか、あかねは納得した面持ちでジョエルの言葉に耳を傾ける。


「聞いた話だが、お嬢さんもその者に大分世話になったようだな」

「うん。アロガンテにいた時、親切にしてくれたよ。紅晶がいない時とか話し相手になってくれたりもしたし。口数は少ないけど、優しい人だよ」


それだけではなく、紅晶と共に自分の身に危険が及ぶことを承知で逃がそうとしてくれたり、襲撃してきたアヴィドの者から守ってくれたりもした。


「矢一は無事だったの?」

「残念だが、協会が保護した者の中にも、連行した者の中にもそのような人物はいないようでな。詳しいことは不明だ」

「そっか…」

「協会は尚も捜索を続けてはいるようだが、紅晶やアーネストの話を聞く限り、見つけることは難しいだろう。もし、彼の消息がどうしても知りたいのなら、アーネストか君の友人に相談するんだな」

「友人?」

「対価さえ支払えば見合った情報を確実に提供してくれるからな。まぁ私には関係のないことだが」


一方的に話すジョエルだが、今の現状を打開する術を示してくれている。
友人というのは瀬々のことだろう。
確かに泰牙の一件の時でも世話になり、その存在しか知らない協会を宛てにするよりかは、ずっと信用出来る。



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