桜空あかねの裏事情


見下ろしながら愉しげに喉を鳴らし、ジョエルは皮肉を込めた言葉を浴びせる。
それに対して、あかねは怪訝な表情を見せて口を開いた。


「生意気で結構だわ。それより何で私の部屋にいるわけ。変態?」

「フッ…心外だな。今し方帰ったので赴いたところ、扉が大きく開いていたのでな。ノックをする必要などないだろう」


言い終わると同時に、ジョエルはあかねが座るソファに腰掛ける。
詫びるどころか開き直っているようにも取れるその態度に、言いたいことが無いわけでもないがここは我慢と、あかねは気を静めるように改めて座り直した。


「で、何かあったの?」

「何故?」

「何故って……ジョエルって自分から人と関わらないでしょ。なのに私のとこに来るってことは用があるか、何か気になる事でもあるのかなって」


普段から部屋に籠もりがちなジョエルが、自ら他人と接触することがあるとすれば、思い付くのはそれぐらいだった。


「なるほどな。お嬢さんも以前に比べて、察しが良くなったな」

「そうなの?でもジョエルの事は前よりも分かってるつもりだよ」

「……そうか」


ジョエルは素っ気ない返事をしながら、笑顔で答えるあかねを視界に捉える。
年相応のあどけなさを思わせると同時に、遠くの何かを思い出させる既視感があった。


「とりあえず、今日の一件を報告をしておこう。今回の聴取は、主にアロガンテの実態についてだった。深く追及されてはいたが、紅晶を咎めるようなことはなかった」

「そう……良かった」


紅晶の身に危険が及ぶことは無かったと聞いて、あかねは少しだけ安堵の色を見せる。


「行方不明だった未成年異能者は保護され、アロガンテに正式所属していた者達は、売買に関与していたか否かで処分が決まるそうだ。そして」


ジョエルは更に言葉を続ける


「君や紅晶が言っていたオーナーとやらは、売買以外にも関わっていたらしくてな。協会の特殊部隊に引き渡して重い処分を下すこととなった。まぁ当然の結果だろう」

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