桜空あかねの裏事情



それからしばらくして、あかねと昶は再び試験対策に取り組んだ。
そして深夜一時になったところで、結祈が食堂にやってきて昶に入浴を促したので、本日の試験対策を切り上げることになった。


「じゃあおやすみー」

「おう。また明日な」



自室へ戻っていく昶を見送り、ゆっくりとした足取りで自室へ向かった。


「今日は数学だったから、明日は物理にしよっかなぁ」


階段を登りながら、あかねは呟く。
三階に辿り着き、一直線にある自室へと戻ると、机に荷物を置いてソファに全身を投げ出した。


「つっかれたー……今日はそのまま寝ちゃおっかな」


一人呟きながら、瞼を閉じかける。


「…そういえば、紅晶達は帰ってきたのかな」


帰宅してからすぐに試験対策をし始めて、周囲を気に掛けている暇などはなかったが、朔姫や結祈をはじめとする数人は食堂を行き来しており、何度かその姿を見ていた。
しかし事情聴取の為、協会に赴いたジョエル達の姿は一度も見ていなかった。
流石に日付も変わっているので、帰って来ている気がしなくもないが、会ってもいないので確証はない。


「んー…ジョエルの部屋汚いけど、ちょっと覗いてみようかな」

「ほう。どこが汚いんだ?」

「どこって書類がいっぱい山積みで足場がなくて、んで湿っぽ……く、て………」


すらすらと流れるように出ていた言葉は次第に詰まっていき、あかねは口を閉ざす。

――あれ……私、誰と話してんの。
――というか今の声…。

うつ伏せになっていた体を起こし、静かに顔をあげる。
そこには会いたかったような、会いたくなかったような非常に曖昧な人物がいた。


「うげ」

「クックック……アロガンテの一件から多少は大人しくなったかと思ったが、相変わらず生意気な小娘のままか。流石の一言に尽きる」


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