桜空あかねの裏事情


話を振られた結祈は、見せていた笑顔とは裏腹にあからさまに嫌そうな顔をした。


「ここで自分に聞きますか?」

「私より知っていると思ってね」

「……大人の姿をした子供かと思います」


気乗りしないのか結祈は間を空けながらそう答えた。
青空が見える穏やかな部屋のはずが、今は妙な雰囲気に包まれている。


「そろそろ広間へ行きましょう。皆さん待ってますから」

「あ、うん」


居心地の悪さを一掃するかのように、結祈は声を掛ける。
あかねは頷いて、鞄を部屋に置いて部屋を後にする。
彼の後に続いて歩いていると、後ろにいたアーネストに声を掛けられる。


「あかね嬢」

「はい」

「緊張するかい?」

「え…っと……どうですかね」


聞かれている事はなんとなく分かっていたが、あかねは軽く言葉を濁す。


「それなりには……多分」

「ふふっ。それなりにか。心配する事はないよ。みんな良い子達だから」


アーネストは心底楽しそうに笑って、それにと言葉を付け加える。


「何と言っても、君はあのジョエルに向かって変質者と言ってのけた強者だから」

「は……?」


一瞬思考が止まった。
だがすぐにアーネストは何故そんな事を知っているのかと疑問が浮かぶ。
あの場にいたのは自分と昶と、黒ずくめの男の三人だけ。
あかねは更に思考を巡らせて、ある一つの結論に辿り着く。
その瞬間あかねは歩みを止めて、元来た廊下へと体を半回転させた。



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