桜空あかねの裏事情



先を歩いていく結祈の後に続いて、校門を出て駅周辺の繁華街へと向かう。
昼間だからか人が多く煩わしい印象もあるが、戸松の街並みを見慣れていないあかねにとって、それは新鮮なものでもあった。


「黎明館は駅を通って、東口から徒歩10分ぐらいのところにあります」

「黎明館?」

「はい。今日から貴女様が住む三階建ての洋館です」


三階建ての洋館。聞く限りでは随分な豪邸という印象だが、寮ならそれくらいの規模でもなんらおかしくない。


「他にも誰か住んでいるんですか?」

「はい。自分を含め五名ですが、現在滞在している方がいますので合計六名ですね」


思っていたよりも多く、あかねは知ったばかりだというのにどんな人達なのか気になり始めていた。


「皆さんとても良い人達です。貴女様が来るのを楽しみにしていましたから」

「そうなんだ!良かった……」


表情を読み取ってか、結祈はそう笑顔で答える。
歓迎されていると分かり、あかねは少しだけ安堵する。
それにより余裕が出来たのか、先程からある疑問を聞いてみる事にした。


「あの、結祈さん」

「結祈でいいですよ。皆さんそう呼んでますから」

「じゃあ……結祈で。あの聞きたい事が」

「はい。何でしょうか?」

「えっとその……何で敬語なの?」


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