走り去る昶を見送って、あかねも鞄に手をかけようとするが何故か鞄が無かった。
「あれ?」
辺りを見回せば、自分の鞄は既に結祈の手に渡っていた。
「……あの」
「はい」
「鞄くらい自分で持ちますから」
簡潔にそう言えば、結祈はただ首を横に振る。
「いえ、これもお役目ですので」
お役目とは一体何なのか疑問だったが、聞いてもいいことだろうか。
だが知り合ったばかりの人に荷物を持たせるのはとても気が引ける。
仕方なくあかねは結祈から鞄を取る。
「出来る事は自分でしますんで、お気遣いなく」
はっきり言い切ると、結祈は不満そうな顔するどころか一瞬目を丸くして微笑む。
「はい、分かりました。では参りましょうか」
「お願いします」
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