「何というか、その……あまり能力使った事なくて」
「そうなのか。あかねは異能のコントロールがちゃんと出来てたんだな」
「うーんと……」
歯切れの悪い言葉に気付くこともなく、昶は話を続ける。
「昔会った異能者に聞いたことあんだけど、どんな能力であれ、若い異能者ってメンタルが不安定で能力を無意識の内に発動したり、必要以上に使っちゃったりするんだってさ」
「そうなんだ……」
初耳だった。
そんな事を知っているのは、きっと昶自身が能力を持っていた事で苦しみ、それでも逃げずに向き合おうとして自分なりに努力してきたからなのだろう。
それに比べて異能者の事、更には自分の事さえ全く知らないのだと、あかねは密かに痛感した。
「とにかくオレはさ、母さん達が見捨てなかったように、自分も向き合って生きていきたいんだ。変か?」
「全然。むしろ最高。そういうの」
「ははっ!そう言われると照れる」
軽く頭を掻く昶。
「つか、何かしんみりしちまったな」
「いいよ。昶の事知れたし」
場の雰囲気よりも、相手を深く知る事の方が重要である。
「そっか。やっぱあかねは良いダチだな!オレ感激した!」
「ありがとー」
「あ!本気にしてないだろ!」
冗談を言いながらふざけ合う。
辺りは自分達しかいない所為か、やけに声が響いている。
笑いながらふと目線を上げると、自分達と大して変わらないであろう少年の姿が目に入る。
何故か制服を来ておらず、燕尾服のような格好に身を纏っていた。
目が合った瞬間、少年は驚いたような顔をしたが、すぐに笑みを浮かべてこちらに向かって一礼する。
それに反応するように、あかねもまた頭を軽く下げる。
それに気付いた昶は、少年の方を見ると不思議そうに呟いた。
「誰?めっちゃ美少年だけど」
「さぁ……」
興味津々の昶を余所に、あかねは歩み寄ってくるその少年について考える。
短い赤茶髪に中性的な整った顔立ち。
昶の言う通り美少年と言っても強ち間違っていない。
見るだけでも強烈に印象に残りそうなのに、自分の中に記憶がないとなると、やはり初めて見る顔なのだろう。
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