黒貂が言うに、自分さえ良ければいい軽薄な輩らしいが、言葉を交わさなくても直に見ただけで、あかね自身も妙に納得していた。
どこがどうとは、敢えて言わないが。
そんな事を思いながら再び男を見れば、彼は黒貂だけを視界に捉えて、恍惚とした表情を浮かべていた。
「僕がいなくて寂しくなかったかい?」
そう言って、則義は黒貂に近付いて手を握る。
その目には、本当に彼女以外は映っていないようで、あかねは蚊帳の外とはこういう事を言うのだろうかと、胸内で思った。
「…ええ。則義様が与えて下さった、この方がいらっしゃいましたから」
黒貂が僅かにあかねに視線を向ければ、則義も続くように視線を向けた。
「ああ、矢一に頼んだ子か。そっか。それならまぁ良かったけど……」
相槌を打ちながらも、あかねを上から下まで見る。
「んー…写真でも思ったけど、直に見てみると……」
「?」
「思った以上に、みすぼらしい子だね」
――……何だって?
「黒貂、ホントにこんな子で満足?」
「ええ。今までの方達より話も弾みますし、傍にいるだけで楽しくなります」
「無理しないでいいんだよ。君は僕の大切な黒貂なんだから」
――攫っておいて、なんて失礼な奴だ。
そりゃあ、あなたが大事に大事にしてる黒貂に比べたら、顔も良くないし胸もないけど?
今どき赤の蝶ネクタイなんか付けてる、アンタよりマシ。
「私は満足しております」
「そうは言っても、僕が納得出来ないなぁ。まぁ血統はすごくいいみたいな話は聞いたけど」
則義はいかにも不快そうな顔で、訝しげに見下ろす。
あかねもまた不快に感じながらも、表情には極力出さぬように無表情を努める。
「少し経ったら、この前の子みたい闇市に売っちゃおうか」
「!」
「まぁ!」
闇市という言葉に反応するあかねの傍らで、黒貂は驚いた表情を浮かべて、悲痛の声をあげた。
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