桜空あかねの裏事情


それだけでも十分に不可解だが、極めつけは自分がその男に懐かしさを感じていた事であった。
知らないはずの男に、懐かしいと言う感情を抱くなど普通では有り得ない。
家に帰って兄にそれとなく聞いてみたが、やはりそんな男と接点は無かった。


「……なあ」


昶の呟きに目を向ければ、どこか真剣な面持ちをしていた。


「ん?」

「こんなこと聞くのもあれなんだけどさ……あかねも異能者なんだよな」

「うん。昶もでしょ?」


素直に頷いて聞き返せば、昶の瞳が少しだけ揺れ動く。
自身が知っている異能者の話を聞く限り、恐らく聞かれたくなかった事なのだろう。
周りが他人と違うだけで異端視し、忌避するのはどんな世界、社会でも存在している。
形成された枠組みから外されないために、その異端と思われる部分に触れず、隠そうとするのは自然のことである。


「ああ。驚いたか?」

「うーん。微妙」

「なんだよそれ」


若干的外れな答えに、苦笑して軽くど突く昶。


「なんとなく予想してたというか。驚いたと言えば、こんな身近にいた事かな」

「確かに。それはオレも思った」


話す内にぎこちなくも笑顔に戻りつつある昶に、あかねは優しく微笑む。


「大丈夫」

「え」

「私は怖がったりしないし、拒絶したりしないよ。友達だからね」


その言葉に昶は目を大きく見開くと、下を向いて少しだけ笑った。


「そっか……ありがとな」

「どういたしまして」


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