「言わなくても分かってるかと思いやすが、あかねっちもその可能性が否めない。しかも彼女は希少な異能を持つ上に、御三家の血統付きときた。闇市で売りに出されたら、破格の値段がつくはずッス」
「ッ…」
人は珍しいものに好奇な目を向ける。
それは異能者であれ、一般人であれ変わらない。
もしそのような事が目的なら、彼女の身が危険に晒される。
早く助けに行かなければと、焦燥感が体中を駆け巡る。
「あ、それともう一つ。さっきアロガンテはある意味、要塞と言いやしたが、理由はまだ教えてなかったッスね」
そんな朔姫を落ち着かせる為か、瀬々は張り詰めつつある空気を解すように、飄々と話した。
「それは、あるかも知れない抗争に備えてじゃないの?」
「他はね。ところがアロガンテには、驚く事に仕掛けがあるのは地下だけなんス。先輩曰く、その中には一人の女がいるらしいんス」
地下の要塞に、一人の女。
朔姫はある言葉に辿り着く。
「それは監禁?」
「んー正確には軟禁?何でもその人は、アロガンテのオーナーのお気に入りらしくて、ほんの数回しか屋敷を出たことがないとか」
「窮屈な暮らしね」
率直な感想だった。
女の意志など、もちろん知っているわけではない。
だが大切だからと言って、逃げないように蝶の羽をむしるような行為に、朔姫は嫌悪にも似た何かを覚えた。
「見た事ある先輩曰く、まるで同じ人とは思えないほど、美しいとか。噂では絶世の美女とか言われてたりするんス」
「その人と、あかねは何か関係があるの?」
「はっきりした事は言えやせんが、その絶世の美女の周りには常に十代の少女が付き人として、何人か付いてるらしいんス」
「……」
瀬々が言いたいのは、あかねが連れ去られた理由は、闇市で売られる為だけではなく、付き人とされる可能性もあるということだ。
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