桜空あかねの裏事情



長くなると予想していた入学式は、あっけない程簡単に終わり、あかねと昶はクラスに戻ってHRを行った。


「桜空あかねです。とりあえず、よろしくお願いします」


はじめは一人ずつの自己紹介だった。
名前と軽い挨拶だけの味気ないものなので、クラスメート達からの反応は当然ない。
中には視線をこちらに向けるクラスメートもいたが、関心はあまり高くないだろう。


「香住昶ッス!ちょい前から寮に住んでます!気軽に声掛けてな!あと彼女募集中!よろしく!」


冗談混じりの紹介が、前から聞こえ思わず微笑む。
それに気付いた昶は、あかねに向かってピースをする。
その後は彼と同じく冗談混じりの自己紹介をする者、自分と同じく名前だけの者や恥ずかしながらも一生懸命話す者など様々だった。
一通り聞いていたあかねは、その中で山川朔姫という少女に目が止まった。
自分程ではないにしろ高校生にしては小柄で、日本人離れした顔立ちの色白の美少女だった。
金髪にも似た色素の薄い茶髪を一つに束ねたその凜とした姿は、目を引かれるもののどこか人を寄せ付けない雰囲気があり、まるで冷たい氷を思わせた。


「山川朔姫です。よろしくお願いします」


はっきりとした声で告げた彼女は、容姿を含めて恐らくクラスの中で一番浮いているだろう。
教室というこの空間を、一番見渡せる場所でそう思った。

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