愉しげにそう言って、今度はジョエルを見据えて目を細め、口元に弧を浮かべる。
「だからこそ、分かっているだろう?彼女は自分が決めた事を最後まで貫き通す。些細な事で揺らぐ事も折れる事もない」
「だからどうした?どう足掻こうが所詮、たかが小娘さ」
明らかに見下しているよう鼻で笑う彼に対し、アーネストは半ば呆れたように口を開く。
「大した自信だね。けれど、そのたかが小娘に振り回されているのは、どこの誰かな?」
「何を言うかと思えば……私は振り回されてなどいない」
「おや、そうなのかい?ならば何故、あかね嬢に皮肉の一つや二つ投げたりしないんだい?それどころか会う事もしない。その子供染みた反応が、何よりの証拠だと思うけど」
笑みを絶やさず、穏やかな口調でかつ挑発的に問い詰める。
一聞、宥めるような言い方にも取れるが、ジョエルにとっては不快そのものだったのだろう。
笑みを保ち答えを待つアーネストを一瞥し「気分が悪い」と吐き捨て、自室から出て行ってしまった。
「これは残念。逃げられてしまった」
心底残念そうに告げれば、掃除用具を片手に持つ結祈が、苦笑しながら近寄って来る。
「お二人の会話を聞いている側としては、逃げて下さって良かったです」
「……今でもジョエルが苦手かい?」
そう問えば、曖昧な笑みを浮かべる。
「苦手……ではないと思います。ただ無理難題を押し付けられたり、理不尽な事を言われたりするので、好きにはなれないです」
「ははっ。それもそうだね」
「……ですが」
結祈は俯きながら、言葉を切る。
「嫌いにもなれないんです。あんな人でも一応、尊敬はしてますから」
「複雑だね」
「いっそのこと、無関心になれたら良かったのですけれど」
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