桜空あかねの裏事情


「オルディネは昔こそ華やかで、羨望の眼差しを一身に引き受けていた。だが長年のリーダー不在、更には数年連続ランキング最下位と、年内解散も噂されている。所属者もたったの五人とランキング戦にも参戦出来ぬほどの人員不足」

「だろ?どう見ても、雑魚じゃねぇか」

「しかしそこには通常有り得ない人材がいる」

「有り得ない人材?」


別室で響く楽しそうな声を聞く傍ら、男は頷く。


「まずは菊地陸人。御三家の一つ、菊地家の三男で自然系の異能を持っている」

「あー………あのガキみたいな顔してるヤツか。あれでオレ様より年上とかありえねーよ」

「………。ともあれ、御三家に迂闊に手を出せば協会の介入はおろか、七華も黙ってはいないだろう。あの時のように」

「あの時?」

「大した事じゃない。そして御三家の彼以上に、有り得ないのが、五指の一人・ジョエルだ」

「………へぇ」


青年は目を細める。


「うちのボスも警戒してるけど、そんなに強いのかよ。その五指ってヤツは」

「強いも何も、異能者の中でも群を抜いているから、その称号を得れたのだ」

「ふーん。でもそういうアンタも、ヤツらの姿は見た事ないんだろ?」

「ふむ。確かに全員を見た事はないな。だからこそ、油断は出来ぬ」


そう答えた男は、恐らく五指の誰かに会い、その実力を垣間見たのだろう。
そうでなければ、普段あまり口を出さないこの男が、ここまで自分を諫めるような発言をしないと青年は知っている。
それに五指の存在を知らぬ訳ではない。
チームを統括する協会でさえも、一目置いている存在である。
だが青年は彼等の姿を見たこと一度もないのだ。
彼等を知る者の話を聞いても、どこか絵空事で本当に存在するのか、どうしても疑ってしまう。


「ともあれ、まずは奴が言った情報の審議を確かめないとな」

「ソノヒツヨウハ、ナイヨ♪」


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