桜空あかねの裏事情


男が諫めるように言えば、女はさも不思議そうな顔をする。


「あら、私は一言しか言ってませんわよ?」

「ならば、挑発は控えてくれ」

「善処は致します」


了承の声を聞くと、男は再び前へと向き直る。


「すまないな。うちの部下達が失礼した」

「いえ、構いません。それで……その、例の件は」

「ああ。滞りなく準備は出来ている。決行日に手の空いてる人員にやらせるつもりだ」

「そ、そうでしたか!ありがとうございます」

「大したことではない。小娘一人、我等には造作もないこと」


その後、軽い談笑ではなく堅実なかつ商談的なやり取りが続く。
取引をする中で条件に満足したのか、用件が済むと和装の男はそそくさと帰っていった。


「フー!ヤット、デテイッタネー」


気配が消えると、終始無言だった少女が大きく息を吐きながら、ようやく口を開いた。


「オキャクサマガカエルマデ、ゼッタイシャベルナッテイウカラ、ズットダマッテタ……アタシ、エライ?」

「ええ。幼い貴女にしては、よく出来ましてよ」

「ワーイ♪ホメラレター!ネェネェ、アッチニアルオカシ、タベテイイ??」

「ええ」


少女は笑みを浮かべ、橙の髪靡かせながら部屋を一周駆け回ると、奥の部屋へと掛けていく。
女もその後を追うように、落ち着いた足取りで続く。


「ったくよ……ガキとババアは呑気でいいよな」

「そう言ってやるな。我慢していたのは事実なのだから」


宥めるように男が言えば、青年は軽く溜め息を零し、空いてるソファに腰掛ける。


「んで、どうすんだ?あの男はオルディネにいんだろ?仕留めるなら早くヤろうぜ。昔は盛り上がってても今じゃ廃れてんだろ」

「……否定しないが、行ったところで仕留められるのは、恐らくお前だ」

「はぁ?」


素っ頓狂な事をあげる。
青年には、どうやら男の真意が汲み取れないようだ。


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