「君は東京に言った事ある?」
「ありますよ。というか、実家が東京なんで」
そう答えると、泰牙は身を乗り出し目を輝かせる。
「ほんとー!んじゃあさ!あさくさ寺ってあるよね?」
「あさくさ寺?……ああ、それって浅草寺じゃないですか?」
「そうかも!さっきテレビで見たんだけどさ、仲見世ってとこ楽しそうだよね!」
先程の困った笑みに変わって、子供のような無邪気な笑顔に、あかねもまた楽しそうに頷く。
「そうですね。お店いっぱいありますし、私は好きです」
「そっかそっか!君の話を聞いて、ますます俺も行ってみたいけど、ちょっと無理っぽいかな?残念だけど」
「どうしてですか?」
「んー……なんていうか……ほら俺は異能者だし、東京に行った事ないから、地理もあんまりね」
もっともな理由を述べるが、実のところ狙われる可能性があるからだろう。
そして他人を巻き込む事を避けているのだろう。
だがそうなると、怪我が治りここを去った後も彼を狙う連中が諦めるまで、或いはその命が終わるその時まで、ずっと逃げ続ける人生を送るのではないだろうか。
異能者というだけで十分な枷なのに、それ以上に枷を着けなければならないのだろうか。
――……違う。そんなことない。
「……なら」
「ん?」
「私と一緒に行きませんか?」
提案すると、言わずもがな泰牙は驚いて狼狽える。
「ええ!?……き、君とかい?」
「はい。行き方なら知ってますから。それにここに来たのは4月からなんで、一般の方が詳しいんです」
「へ?そうなの?だったら…」
そこまで言って言葉が途切れる。
やはり躊躇しているのだろう。
泰牙はしばらく無言になると、ようやく首を振った。
「…いや、やっぱりいいよ。君に迷惑掛けちゃうから」
「だから迷惑じゃないですってば!」
「そう言ってくれるのは、嬉しいんだけどねぇ」
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