桜空あかねの裏事情



互いの自己紹介が済むと、昶は安心したのか笑顔になり一条の方を視線を移した。


「教室にいなくていいのか?」

「そうなんだけど。佐々木のヤツがいなくなっちまってさ、香住知らない?」

「佐々木?見てないけど」


知らない名前が出て、疑問に思っていたのに気付いたのか、寮のヤツと昶が教えてくれた。


「マジかー。あいつどこ行ったんだ?」

「さぁ…でもあんまうろちょろするヤツじゃねーから、もう戻ってんじゃね?」

「かもなぁ。とりあえず戻るわ。またな!香住!お嬢!」


そう言って一条は二人から離れ、軽く手を振りながら階段を登っていた。


「…あのさ」

「ん?」

「……お嬢って何?」

「ああ……あだ名じゃね?お前の」

「やっぱり?」


妙なあだ名がついた瞬間だった。


.