口籠るあかね。
個人的な事情に他人を巻き込むのは、などと考えているのだろう。
口では語らぬものの、表情で語るあかねにジョエルは近寄って隣に腰掛ける。
そして未だにクッションを抱きしめて俯く彼女の頭に手を置き、あやすように優しく撫でる。
「君は出来る限り一人で抱え込んで、他人を頼ろうとはしないだろう。だが普段から信頼している相手にさえ、肝心な時に何も話さないでいる方が酷だと思うが」
「それはそうだけど……」
「迷惑かどうかは個人によって異なる。少なくとも私は、君に頼られる事は嫌ではない」
嫌ではない。
その言葉にあかねはハッとなって、若干赤みが引いた顔をあげた。
その表情には僅かに驚きを含んでおり、泣いたり笑ったり百面相するあかねに、ジョエル少し可笑しくなって笑みを零す。
「何か驚くような事を言ったか?」
「ジョエルが優しいと思って。珍しく毒舌もないし、笑ってるし」
「フッ…相変わらず減らず口だな。まぁいい。今回ばかりは聞かなかったことにしよう」
普段の調子に戻りつつあるあかねを見て、ジョエルは心なしか安堵し、今度は髪を撫でていた手であかねを引き寄せる。
そして彼女の頭だけ自分の胸に抱き寄せた。
「ジョエル?」
「悩みの種であるその家庭事情は、お嬢さんの気持ちの整理が着かない限り、解決しないだろう」
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