桜空あかねの裏事情


時に魅入られてしまうほどの美しさと強さを兼ね備えた彼女の透き通る青い瞳は、今は曇ってその輝きを見ることが出来ない。
普段あれだけ物事をはっきり言い、自身の意志を貫くあかねが涙を流していたという事実は、ジョエルに衝撃を与えるには充分であった。
一体何があってそうなったのか。
突き止めたくなる衝動に駆られるが、当人から話してもらわぬ限り分かるはずもなく。
ジョエルは終始無言のあかねを、見守る事にした。
しばらく口を割らないだろうと断定したジョエルは、再び手元にある本に視線を向けるが不自然なほどに不気味な静寂に包まれ、集中するどころか落ち着かなかった。
同時に未だ口を噤んでいるあかねに内心困り果てていた上、痺れを切らし苛立ちを含み始めてもいた。


「話すことがないなら、私は――」

「ジョエルは」


言葉に被さるように、ようやくあかねは口を開いた。


「ジョエルは……本当は仲良くしたいのに、仲良く出来ない相手とどう接してる?」


陰りを含んだ青い瞳で見上げながら、あかねは問い掛けた。
そのような事を聞かれるとは思わなかったジョエルは、僅かに目を丸くする。
通常ならからかいながら問答を繰り返すところだが、状況が深刻だっただけに、質問に質問で返すなど馬鹿げたことはしなかった。


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