黎明館 三階 あかね自室
――どうしよう。
自室のソファに座りながら、あかねは心の中で呟く。
――さっきは泣いてたのがバレて、動揺しちゃって
――あやふやなままジョエルと一緒に、部屋に戻ったけど……。
あかねは焦燥を宿した瞳を、目の前のソファに座るジョエルに向ける。
――それにしてもジョエルってば、今日に限っては優しい。優し過ぎる。
――もしかして、私に何かさせる気だったりして。
あかねは内で思惑を広げ、泣きはらした顔で凝視するが、目の前の相手はまるで気付いていないかのように本を読み耽っている。
声を掛けることもせず、ただじっと様子伺っていると、ジョエルは溜まりかねたように溜息を零して、ようやくあかねに向き合った。
「そのように見られては、集中出来ないんだが」
「だって…」
「何を勘繰っているかは知らないが、私は純粋に君を心配している」
「……」
「話したい事があるなら、今の内に話すことだ。このような機会、二度も無いだろうからな」
冷ややかな物言いではあるが、ジョエルとしては十分に気遣っているのだろう。
しかしあかねは未だ惑った表情をして、目を伏せて再び沈黙を貫き始めてしまう。
.

