――あかねは大丈夫だっつったけど、どうしても引っかかる。
――一瞬だけ見せた曖昧で弱気な笑み。
――あれは何を意味してたんだ。
「……どうやら、思い当たる節があるみたいッスね」
昶の様子に何かを察した瀬々は、先程の軽口とは違い、落ち着きを払っている。
「ああ。やっぱあかねが心配だ。来たばっかの瀬々には悪いけど、オレ今日は帰るわ」
「そうッスね。残念ッスけど、今日はその方がいいと思いやす」
少し残念そうな表情をする瀬々に、昶は悪びれながらも身支度を整え始める。
「忘れ物はない、と。んじゃまたな」
「あかねっちによろしく伝えといて下さいッス」
「ああ!」
昶が走り去って行くのを見送ると、瀬々はおもむろに口を開く。
「やっぱり彼も彼女と同じ様に、真っ直ぐだ。痛いほどに。二人を見てると、駆け引きでしか感情を出せない俺が、少し恥ずかしい」
誰もいないはずの廊下で、瀬々は独り言のように話始める。
「それと同時に羨ましくも感じる。けど、そう感じるのは何も俺だけじゃないッスよね」
言い終わるのと同時に振り返り、瀬々は右端に映る角を見つめる。
「そろそろ出て来たら?盗み聞きなんて、柄じゃないッスよ」
「………」
「まぁ俺としては、どちらでも構わないんスけど」
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