投げられた問いに従順に答える槐は、どこか寂しげで憂いを含みながら言葉を続ける。
「正直に言うと、よく分からないっていうのが本音なんです」
「……」
「だからもっと知りたい、解り合いたいと思うんです。だけど……それは思ってた以上に難しいですね」
下を向いたままそう答えた槐の表情は分からない。
だが結祈は、その思いにはどことなく自身にも通ずるものがあると感じた。
「そうですね。知りたいと、こちらから向き合っても、相手が応えてくれるとは限りません。仮に解り合えたと思えても、時にそれが……間違いだったということもあります」
まるで過去にそのような事があったと言わんばかりの発言をする結祈。
その目は隣にいる槐でもこの部屋の景色でもなく、ここではないどこか遠くを見つめているようだった。
「詳しいんですね」
「いえ、そういうわけでは。ただ自分が思った事を言ったまでです」
あくまで個人の意見だと主張する結祈。
一方の槐は、困ったように笑みを浮かべて、彼を見る。
「だけど……それでも私…、諦めたくないんです」
そう言った彼女の姿に、結祈はまだ何も知らなかった遠い日の自分が重ねて見えた気がした。
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