黎明館 一階客間
「大丈夫ですか?」
あかねが去った後。
結祈は彼女に言われた通り、床に座り込んでいる槐の様子を伺いつつ手を差し伸べる。
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
しかし槐はその手を取ることなく、一人で立ち上がって笑みを浮かべる。
それは初対面の結祈でさえ、無理をしているものだと分かるものだった。
何故そんな表情をするのか。
そう聞かなくても、結祈には十分過ぎるほど分かっていた。
来客である目の前の少女の名前を出した途端、明らかにあかねの様子が変わった。
それが気になった結祈は、彼女が客間へ入ったのを確認すると偶然居合わせたと装う為、わざわざティーセットを持ちなが、立ち聞きしていたのだった。
――話を聞く限り、この方はあかね様の義理の姉妹なのでしょう。
あかねがこの館に来る前に、ジョエルから口頭で桜空家の事情を聞かされた結祈は、思いのほか冷静に状況を理解する事が出来た。
「……あの」
控えめながら、槐は声を掛ける。
「何でしょうか?」
「一つ聞きたい事が」
「聞きたい事……ですか?」
結祈が繰り返すと、槐は頷く。
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