桜空あかねの裏事情


それから振り返ることなくただ無言のまま、三階まで辿り着いたあかねは、そこでようやく動きを止める。
多少なりとも人の気配がする一階と二階に対し、三階は静寂に包まれている。
その静寂に身を委ねるかのように、あかねはその場でうずくまる。


「何やってんだろ……私」


――あの子の事も母さんの事も、あそこまで言うつもり無かった。
――私の中だけで思っていればいいことだったのに。
――あんなの、ただの八つ当たりにしかならないじゃん。
――知られたくない相手に、本音を晒してどうすんのよ。


「もう嫌……」


そう呟くと、次第に目許が熱を持ち始める。
少しずつ視界もぼやけ、熱くなった目許から何かが落ちて床を濡らす。
それが涙だと気付くのに、時間は掛からなかった。


「…最低」


――あの子も、母さんも。
――そして何より自分自身が。

次々に溢れてくる感情に苛まれて、あかねは腕に顔を埋める。



「お嬢さん」


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