「!」
「あ……あかね」
勢いに任せて客間から出れば、そこには少し後退りした結祈の姿があった。
偶然にも鉢合わせてしまったとあかねは思ったが、一方で結祈はどことなくぎこちない笑顔を浮かべている。
もしかしたら随分前からそこにいて、会話を聞いていたのかも知れない。
「あの……貴女の紅茶を御用意致したのですが」
そんな心情を察したのか、結祈は遠慮がちに両手で持つトレーに乗せてあるポットやカップを見せる。
普段のあかねなら喜ぶところだが、今は何も感じる事は出来なかった。
「いらない。もう話は終わったから」
「そうですか……すみません」
そう言いながら、結祈は客間の様子が気になるようで僅かながら視線をそちらに移している。
恐らく客人である槐を心配しているのだろう。
その姿に、あかねは話を聞かれていたのだと確信する。
「私は部屋に戻るから。しばらく一人にして」
「承知致しました」
特に異議を唱えることもなく、結祈は承諾する。
「それと……あの子の事よろしくね」
「はい」
相応の力で突き飛ばしてしまったのだから、もしかしたら怪我をしているかも知れない。
しかし気まずさから振り向けないあかねは、頭上から結祈の了承を聞くと、静かにその場から去って行った。
.

