桜空あかねの裏事情


「そんな風にしか接する事が出来ないなら、いっそのこと放っておいて。こっちは、わざわざ家まで出たんだからさ」

「あかねちゃ――」

「用は済んだでしょ。もう帰ったら?」


聞く耳を持たないかのように、一方的にまくし立てるあかね。


「…………」


だが槐は黙ったまま決して動こうとはせず、あかねは更に苛立ち腹立たしくなる。
それからしばらく無言の攻防が続き、とうとう痺れを切らしたあかねは、深い溜め息を吐いた。


「…もういい。私が出てく」

「ま、待って……!」

「触らないで!」

「きゃっ!」

「っ…」


歩き出したあかねを咄嗟に引き留めようとして、思わず駆け出して腕を掴む槐。
しかしそれすらも煩わしくて、槐を思いっ切り突き飛ばす。
短い悲鳴を上げて倒れる槐。
僅かながらも机に当たったのだろう。
その反動で置いてあったカップから、結祈が注いだであろう紅茶が零れる。

再び重い静寂を取り戻した室内で、床に手と膝を付いたまま俯く槐の表情は分からない。
だがその姿を見て、自分が思ってたよりも力を出していた事に気付いたあかねは、いたたまれなくなって部屋を飛び出した。


.