「別に。嘘ばっかりで嫌になっただけ」
「嘘…?私、嘘なんか吐いてないよ」
「どうかな。私と話したいとか言って、結局はただ気遣ってるだけじゃん」
「そんなこと――」
「あるよね。じゃなきゃ、ここに来てわざわざ日向なんて名乗ったりするはずないもの」
「!」
まるで弁論すら許さないような発言と、急に変貌したあかねの冷たい態度に、槐は言葉を失う。
「遠慮なんかしないでいいよ。戸籍上は誰が何と言おうと、もう桜空槐なんだし」
定まらない焦点のまま静かに言い放つ。
「それにしても、母さんもよく平気で言えるよね。大切になんて、そんなこと思ってもないくせに」
「え…」
「ああ、勘違いしないでね。あなたの事は大切にしてるよ」
――見たのはほんの少しだけど、
ーー葵や楓と接する時と同じだったのを知ってる。
「そんな……ヨシさんはあかねちゃんの事も、ちゃんと大切に思って」
「それはないよ。母さんが本当に私を大切に思ってるなら……あんな事言わないし、兄貴達と同じように教育するよ。何より、嫌がる私の意見なんて無視せてあなたを引き取ったりしないわ」
思い当たる節があったのか、それとも掛ける言葉が見つからなかったのか、槐はそれ以上何かを言うことはしなかった。
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