「……槐ちゃんは」
「え」
「どうしてここに来たの?」
淀みつつある空気を振り払うように、本題へと話を移すあかね。
すると槐は少し困ったように眉根を下げた。
「棗さんから頼まれた本を渡すのと、その………」
そこまで言って、槐は言い淀む。
「何?」
「あかねちゃんと……少し、だけでも…話したくて」
彼女の目的を知ると、あかねは予想はしていたのか、気付かれぬように溜め息を吐く。
「私は別に、話す事なんてないよ」
気遣う事も悪びれる事もせず、あかねも本音を零す。
その言葉に槐は悲しそうな表情を浮かべたが、咄嗟に言葉を紡ぐ。
「うん。分かってる。あかねちゃんが私を嫌いな事は。いきなりやって来た赤の他人が、新しい家族だって紹介されても、納得しないのは当然の事だと思うから」
「………」
「でも、……そのままじゃいけないって思うの」
声は小さく弱々しいものの、薄茶色の瞳はしっかりとあかねを捉える。
「私が養女になる前に棗さんと話した時があって……その時に初めて、あかねちゃんの話を聞いたの。我は強いけど思いやりのある子だって、棗さんは言ってた。どんな子か不安な反面、会うのがとっても楽しみだったの」
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