桜空あかねの裏事情


「昶っち」

「ん?」

「あかねっちは、何ともなかったッスか?」


不意に投げられた疑問に、心臓が跳ねる。


「は……何だよいきなり」

「聞き方が悪かったッスね。あかねっち、何か様子が変じゃありやせんでしたか?それか普段と違ったとか」

「別に……これと言って、なかったと思うけど」

「……そうスか」


それきり瀬々は黙り込んでしまい、辺りは妙に重い沈黙に包まれる。
それに伴い、真実を打ち明けていない昶は徐々に不安になり、戸惑いながらも口を開いた。


「何か……あんのかよ」


昶の問い掛けに、瀬々は目を丸くする。
そして、どちらとも取れる曖昧な笑みを浮かべた。


「んー。あるかどうかは、本人から聞かなきゃ流石に分かんないッスけど」


考えを纏めているのか、瀬々は少し言葉を濁す。


「まぁ……あかねっちは、自分の感情をストレートに出して伝える割には、相手に悟らせる事は許さないッスからね。何もないって事は、ないんじゃないッスか?」


飄々とした瀬々の答えを、昶はただ沈黙を通したまま聞いている。


「で。俺の予想で、そのお客様は、多分……あかねっちの妹」

「妹?」


含んだ割にはあまりに単純な答えに、昶は肩透かしを食らったような感覚に陥る。
だが瀬々の含みは、まだ消えてはいない。


「そう。正確には……血の繋がってない同い年の義理の妹……ッスけどね」





確信すらまだ得ていないはずなのに、昶の中で何かが繋がった気がした。


.