桜空あかねの裏事情


「ああ。知り合いだから、話が長くなるって言ってた」


あかね言ってた事を昶は極力忠実に答える。
何を思ったのか、瀬々は目を細める。


「知り合いねぇ……家族ッスか?」

「さぁ。けど名字が違ったから、多分違う気がする」


だがあかねの様子からして、只事ではないのは確かだ。
しかし今の昶には、どのような人物かは分からなかった。


「名前聞いたんスか?」

「まぁ、確か……ひ、なんちゃらだった気がする」

「はぁ?なんスかそれ」


意味分からないと言いたげな瀬々に、昶は目を逸らす。
あかねの様子が気になって、結祈の話をあまり聞いていなかったのだ。


「名前聞いたなら覚えとかなきゃダメじゃないスか。情報屋の基本ッスよ」

「いや、オレ情報屋じゃねーし」


呆れる瀬々に対して、昶は頭を軽く掻きながら反論する。
すると何か閃いたのか、昶は動きを止める。


「そういや……エンジェとかエンジュって名前だったよーな」

「え?」

「外人っぽい名前だったから、ちょっと覚えて……て……」


言い終わるところで瀬々を見れば、何か思案するような素振りを見せる。
その姿はまるで、こちらの話を聞いていないようだった。


.