桜空あかねの裏事情



「……ふぅ」


部屋を出て昶は大きく息を吐いた。
薄々感じていたが、やはり今日は素直に楽しめないのだと改めて実感した。

――大体はあかねがいないからなんだけど。
――あと、やっぱ。

来客の名前を聞いた後のあかねの反応が、昶には気にしない事も忘れる事も出来なかったのだ。
あかねは後で必ず教えると言ったが、昶からしてみれば、親友のあまりの豹変ぶりが気になって仕方がなかった。


「オレってやっぱり……はぁ」


昶は深い溜め息を吐いた。


「なーに溜め息なんか吐いてんスか?」


この憂鬱を壊すような呑気な声が、背後から聞こえた。


「……お前の気配を感じてつい」


本音を漏らせば、背後にいた人物は顔に手を当て、悲鳴のような声を出していた。


「昶っち〜!人が心配してんのに、酷いッスよー!」


泣き真似をしながら、昶に抱きつく瀬々。
鬱陶しいと思いながらも、抵抗する気にもなれずされるがままになる。


「何でいんだよ。つか、いたっけ?」

「今来たんスよ。あかねっち達が行くっていうから、今日は仕事早く終わらせたっていうのに〜。まさかのあかねっちが欠席!癒やしてもらうつもりだったのに、俺っちのハートはブロークン!だから傷付いた者同士で、愛を確かめ合うって事で!」

「気持ち悪い言い方だな、オイ」


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