右往左往する感情を独断的に押し殺して、ゆっくりと扉を開ける。
目に映る光景は、数日前に駿がここにきた時とあまりにも似ていた。ただ一つを除いて。
「あ…」
そんな景色を眺めてただ浸っていたいと思いつつも、現実はそう簡単に許すはずもなく。
呼び戻すかのようにはっきりと耳に届いた声は、間違いなく彼女のものだった。
「あ…かね、ちゃん……」
控えめに様子を伺いながら、恐る恐る自分の名を口にする少女に、少しだけ苛立ちを覚える。
――またか。そんな態度するなら
ーー来なきゃいいのに。
ーーって、そうさせてるのは私か。
自嘲しながら、彼女の様子を気にする素振りもせず客間に足を踏み入れ、向かいの席に腰かける。
一瞬だけ彼女と視線を交えては見据える。
そしてあかねは、ゆっくりと口元を綻ばせる。
「久しぶりだね。元気だった?槐ちゃん」
ーーそう尋ねた私の顔は一体
ーーどんな顔をしているのだろうか。
ーー誰にも悟られることなく、いつものように。
ーー満面の笑みを貼り付けられているだろうか。
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